SPAN証拠金システムの概要

Standard Portfolio Analysis of Risk(SPAN)は、Chicago Mercantile Exchange(CME)の開発による証拠金の計算方法です。この方法は、世界中の多くのクリアリングハウスと取引所によって、クリアリングハウスがキャリングFCMから、またFCMが顧客から収集する、先物と先物オプションのパフォーマンスボンド(証拠金)の計算のために使用されています。

SPANは、先物とオプションコントラクトの原資産価格の変動、またをオプションの場合には時間による減衰やインプライドボラティリティの変化も反映する16の仮想の市場シナリオを使用して、ポートフォリオが一定の時間内(通常は1日)に耐えうる最悪の場合の損失を割り出すことによって証拠金を設定します。  

SPANによる証拠金計算の最初のステップは、最終的な原資産が同じポジションを、複合商品と呼ばれるグループに分けるところから始まります。 次に、SPANは、シナリオごとに最大の仮想損失を発生させた状態をスキャンリスクとし、複合商品内の各ポジションのリスクを計算してまとめます。16のシナリオは、複合商品の価格スキャン範囲(一定の時間内に起こり得る原資産価格の最大の変動)およびボラティリティスキャン範囲(オプションに起こり得るインプライドボラティリティの最大の変動)に基づいて決定します。

原資産価格が$1,000、乗数が100、価格スキャン範囲が6%の株式指数ABCのロング先物とロングプットをひとつずつ保有するポートフォリオを想定します。  このポートフォリオのスキャンリスクは、シナリオ14の$1,125になります。

 

 

 

#

1 ロング先物

1 ロングプット

合計

シナリオ詳細

1

$0

$20

$20

価格に変動なし。スキャン範囲でボラティリティが上がる

2

$0

($18)

($18)

価格に変動なし。スキャン範囲でボラティリティが下がる

3

$2,000

($1,290)

$710

価格スキャン範囲で価格が1/3上がる、スキャン範囲でボラティリティが上がる

4

$2,000

($1,155)

$845

価格スキャン範囲で価格が1/3上がる、スキャン範囲でボラティリティが下がる

5

($2,000)

$1,600

($400)

価格スキャン範囲で価格が 1/3下がる、スキャン範囲でボラティリティが上がる

6

($2,000)

$1,375

($625)

価格スキャン範囲で価格が1/3下がる、スキャン範囲でボラティリティが下がる

7

$4,000

($2,100)

$1,900

価格スキャン範囲で価格が2/3上がる、スキャン範囲でボラティリティが上がる

8

$4,000

($2,330)

$1,670

価格スキャン範囲で価格が2/3上がる、スキャン範囲でボラティリティが下がる

9

($4,000)

$3,350

($650)

価格スキャン範囲で価格が2/3下がる、スキャン範囲でボラティリティが上がる

10

($4,000)

$3,100

($900)

価格スキャン範囲で 価格が 2/3下がる、スキャン範囲でボラティリティが下がる

11

$6,000

($3,100)

$2,900

価格スキャン範囲で価格が3/3上がる、スキャン範囲でボラティリティが上がる

12

$6,000

($3,375)

$2,625

価格スキャン範囲で価格が3/3上がる、スキャン範囲でボラティリティが下がる

13

($6,000)

$5,150

($850)

価格スキャン範囲で価格が 3/3下がる、スキャン範囲でボラティリティが上がる

14

($6,000)

$4,875

($1,125)

価格スキャン範囲で価格が 3/3下がる、スキャン範囲でボラティリティが下がる

15

$5,760

($3,680)

$2,080

価格が劇的に上がる(価格スキャン範囲の3倍) * 32%

16

($5,760)

$5,400

($360)

価格が劇的に下がる(価格スキャン範囲の3倍) * 32%

この後、スキャンリスクチャージがコモディティ内スプレッドチャージ(先物カレンダー・スプレッドのベーシス・リスクを考慮した金額)とスポットチャージ(満期が引渡し可能な銘柄のポジションのリスク上昇をカバーするチャージ)に加算され、商品間スプレッドクレジット(相関する商品間のオフセットポジションに対するマージンクレジット)によるオフセット分減額されます。  この合計額は、ショート・オプションの必要最低額(ディープアウトオブザマネー・オプションを含むポートフォリオの最低必要証拠金を確実に徴収するため)と比較され、いずれか大きい方が複合商品の残額となります。これらの計算は、すべての複合商品に対して行われ、ポートフォリオの必要証拠金合計は、すべての複合商品のリスクの合計から、異なる複合商品間で発生するリスク相殺のためのクレジットを差し引いたものに等しくなります。 

PC-SPANとして知られるSPAN必要証拠金の計算に使用されるソフトウェアは、CMEのウェブサイトより利用可能です。